水害対策というものは、どこまで出来るものでしょうか。
今回の豪雨についてアメダスの気象統計を確認しました。推測ですが、矢巾町では観測史上最高の降雨量を記録したのではないでしょうか。以下の各地域は今回の大雨の記録があった地域で、ルートを直線で結ぶと雫石、矢巾、紫波、大迫となります。ちなみに盛岡は記録的という程では無かったようです。
日降水量(括弧内は観測史上の順位)
雫石 264mm(1位)
紫波 211mm(2位)
大迫 135.5mm(2位)
※盛岡の過去最高(24時間)は198mm
日最大1時間降水量(括弧内は観測史上の順位)
雫石 78mm(1位)
紫波 71mm (1位)
大迫 63.5mm(1位)
※盛岡の過去最高(1時間)は62.7mm
ちなみに煙山、不動、徳田の各地区には農業用の気象観測施設があるようですが、あの時間のみの観測データが欠落しており、施設付近が激しい降雨だったことが想像されます。
そして、この地を流れる「厄介な川」が岩崎川の存在があります。
今回の矢巾町の浸水被害の報道見て、心配をしてくださった知人の方々(ほとんどがお嫁ちゃんの知人!)から、「矢巾に川って、あったっけ?」との言葉が。その通りです。普段は水量も少なく、小学校の授業でも「生き物調査」と称して長靴を履いて子ども達が入るほどの目立たない川です。しかし、矢巾町史下巻p.1229には、この地を長年苦しめている川であることが紹介されています。
「岩崎川はその源を南昌山に発し、(省略)水源地である南昌山、金壺山、毒ヶ森山、赤林山等は石英安山岩質凝灰石等により構成されたる山で崩壊性に富み、全山共に山容急勾配で降雨出水の度毎に山の崩壊河川底の流動、河岸の欠潰を惹起し、土砂、砂礫を大量に流下させ、随所に氾濫して田畑家屋に浸水し耕地を埋没し、又、道路、橋梁護岸等の土木工作物を破壊し損害甚大にして旧村民に大きな不安を与えて来たものである。」
「(省略)灌漑用水路として大きな利益をもたらした反面、誠に癌である川で普通は水無川といいたいほど少量の水が流れ、それが毎年洪水季節になると予想もつかぬほどの大量の流出をもたらし関係者をして常に戦々恐々たらしめておったと言われている。」
矢巾町史では、防災ダムである「煙山ダム」の完成を以て水害が解消されたという書きぶりとなっています。それに留まらず岩崎川の河川改修はその後も進められていますが歴史を変えることができるのでしょうか。
雨量の話に戻りますが、先月7月の月降水量のデータも掲載します(括弧内は観測史上の順位です)。
雫石 438mm(2位)
紫波 437mm(2位)
大迫 429mm(2位)
※盛岡 461mm(1位)
ダムも田畑も水で満たされていたところへの降雨だったのかもしれません。この水を「癌である川」に任せられないと思うのは私だけでしょうか。